No.589
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第六十八回「夕」2020年9月5日
霧明かりがゆるやかに力を失いはじめる夕刻、点灯夫は霧払いの灯を灯しなおす。明るい霧を払う灯から、暗い霧の中を柔らかく照らす灯へ。
「行くぞ、オズ!」
山吹色の髪の少年は、霧払いの灯を宿す装置をくくりつけた長い棒を担いで走り出す。その後を、大判のスケッチブックを手にした黒髪の少年がどこか頼りない足取りで追いかける。霧深い首都の人ごみを縫うように駆け、やがて街灯の前で立ち止まった。
山吹色の髪の少年は、街灯の傘の下に器用に棒の先端を押し込み、柔らかな光を灯し、黒髪の少年はその様子を描く。ひとつが終わったら次の街灯へ。それが終わったら、また次へ。
そうしてふたりの少年は、町の一角に夜のはじまりを告げていく。
――『霧払いの灯』
帰宅を促す「家路」のチャイムが響く。
すずめも上履きからローファーに履き替えたその時、チャイムの音色が、歪む。歪んで、狂って、巻き戻って、何度も何度も同じフレーズばかりを繰り返す。
そして、辺りの人もものも全て、ぴたりと、動くことをやめてしまう。
「これは、魔法だね」
もぞり、と。すずめの鞄から顔を出したのはふわふわのぬいぐるみ。大きな青い目ですずめを見上げて、言うのだ。
「君の出番だよ、イリス」
うん、とひとつ頷いて、ローファーの踵を鳴らす。
「空に描くは七色の虹、イリス・アルクス!」
秘密の名前を唱えれば、制服は虹色のドレスに早変わり。虚空に生まれた杖を握り締めて、終わらないチャイムの中、飛び上がる。
――『夕方の魔法つかい』
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