No.583
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第五十四回「水」2019年6月1日
海に行ったからといって、特別な目的があったわけでもない。
四月はじめの海は冷たくて海水浴なんてできようもなかったし、当然綺麗な水着姿のおねーちゃんもいなくて、俺も小夜も心底がっかりしたものだった。
わかってはいたんだが、がっかりするものはするのである。
とはいえ、俺が提案したシーグラス集めは弟分のお気に召したようで、俺が「帰るぞ」と声をかけるまで一心不乱に色も形もばらばらの硝子を手のひらに収めていた。
今まで海を知らなかったガキは、今、海の記憶を水を注いだ瓶の中に閉じ込めて記録する。
……ひとつずつ、ひとつずつ。ゆっくりでいい。
失われた時間を、少しずつ取り戻してほしいと、兄貴分である俺は心から願う。
『瓶詰めの海』
清浄な水は地下迷宮『獣のはらわた』では貴重だ。
そして、それを判別する「能力」が自らに備わったということに関しては、『ヤドリギ』の肉体に寄生――正しくは「共生」している名も無き蔦に感謝している。
燃え盛る炎の中で名も肩書きも失い、不自由な体の異形と化した己がここで生きていくためには、せめて、地上を追われ苦しい生活を強いられている『はらわた』の住人の「役に立つ」必要があった。それがかろうじて自分自身を「人」たらしめる方法であると信じて。
右肩から生えた蔦を地底湖にそっと浸す。
そこには鉱物由来の毒が混ざっていることを人外の感覚で確かめて、次の水場へ。
自分ではない誰かのための、『ヤドリギ』の彷徨は、続く。
『水を求めて』
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