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シアワセモノマニア
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ハッピーをお届けする空想娯楽物語屋

No.54


●appendix / about Oswald Forsyth

 嫌な奴ですよ。存在が嫌味にもほどがある。何しろ、あいつは本来なら「霧航士には成り得ない」。翅翼艇を操れない奴に正規霧航士の肩書きを与える余裕なんて、霧航士隊にはないんです。オレが、他の連中が蒸発するまで長らく補欠扱いであったように。
 それでもオズワルド・フォーサイスは例外中の例外、前代未聞の「特別枠」の霧航士なんですよ。絶対記憶能力に分割並列思考、高速演算能力。それに生まれながらの特殊能力、一定の入力から限定的な未来予測すらも可能とする『虚空書庫』。完全に人間を辞めてるとしか思えない天性の才が、オズを航法士兼銃手専門の霧航士たらしめてるわけです。いやあ、マジで天才って羨ましいですよね。
 あ、こうは言いましたけど、別にああはなりたくねーですよ。翅翼艇に乗るたびに、蒸発とは別に脳死の危険性があるとか、正直やってられませんよ。怖すぎるでしょ。
 それと、あいつ、あんなに頭の回転速いのに、めちゃくちゃ鈍くさいんですよね。なまじ頭の回転が速すぎるだけに、体が全く反応できてない、みたいな……。いや、もしかすると、体だけじゃなくて人格もついてきてないんじゃねーですかね。ほんと、何であんなに不器用なんでしょうね。朴訥で、生真面目で、悲観的。でも、めちゃくちゃ素直で、いつだって、誰かのいいところを褒めて回ってるんですよ。それは俺にはないもので、素晴らしいものだ、って。
 つまり、嫌な奴だけど……、いい奴、ですよ。嫌な奴、っていうのはあくまでオレの僻み、個人的な感想ってやつなんで、あんま気にしないでください。
 まあ、仲良くしてやってくださいよ。あいつ、ほっとくと延々と一人で絵描いて遊んでる引きこもりなんで。遊び相手があのゲイルだけじゃ、かーなーりー、不安なんで。
 
(語り手 アーサー・パーシング)
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#談話室の飛ばない探偵たち

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