アフターグロウ・アフターイメージ/Side: 犬見 勇CoC6版『庭師は何を口遊む』自陣向けに書いたシナリオ、HO3の犬見 勇さん向け。※この文面には『庭師は何を口遊む』のシナリオのネタバレが含まれます。続きを読む■個別トレーラー・犬見さん「……戻ったか、犬見」他部署の応援から戻ってきたあなたに、根林久雄は告げる。鏡八千草の話は正しかったということ。鏑木の容態が思わしくないということ。このまま放置すれば、鏑木は消失し、更に被害が拡大するということ。鏑木を侵すものを食い止める儀式の説明を見つめながら、あなたは一週間前の、鏑木と赴いた不可解な事件現場を思い出していた。======■Side: 犬見 勇/特殊ルール「あなたはこの零課の中で最も屈強な体を持ち、体術などに於いても非常に優れている。」あなたは、本シナリオにおいて〈挑発〉を使用可能である。〈挑発〉この技能はその戦闘ラウンドの間ずっと効力を発揮し続ける。つまり一度成功してしまうと、戦闘が終わるまでの間永続的に機能する。効果は、敵からの攻撃が全て自分に向けられるというものだ。ただし知能数が自分よりも下の獣等にのみ有効である。〈挑発〉は対人間・神格には利用できない。(『庭師は何を口遊む』抜粋)======さて、犬見さん、あなたは今、ちょうど鏑木から指示された他の部署の応援から帰ってきたところです。応援に出る前に、鏡さんがこう言っていたことを思い出します。(鏡さんからの宿題の文面を読み上げ)鏡さんから鏑木の容態についてこのように聞かされていたあなたは、おそらく、不安を抱えていたことでしょう。そして、零課の執務室に戻った犬見さんを、根林さんが迎えます。(根林さんからの宿題の文面、情報項目を読み上げ)鏑木は仮眠室で眠ったままでいます。……本来、一旦は目覚めるはずなのですが、どうやら症状が深刻になってきているようです。このまま放置していれば確実に鏑木は消失し、同じ症状が周囲に広まってゆくでしょう。根林さんは一週間前の話をしました。そう、あなたは一週間前、鏑木と共に「失踪事件」の捜査に出かけたことを思い出します。これは本来は零課の仕事ではないのですが、他部署の応援というやつです。事件の概要としては、前触れもなく失踪してしまった男性の行方の調査です。(その男性の氏名や詳細については当シナリオには無関係のため割愛し、以降「失踪者」とだけ表記します)失踪者と同様の「前触れのない失踪」が同一の地域で数件報告されていますが、未だその行方はつかめていません。犬見さんは、鏑木と共に失踪者の自宅に赴きましたが、行き先の手がかりを見つけることはできませんでした。……その時のことを、あなたは、思い出すでしょう。《回想:一週間前》犬見さんと鏑木は、失踪者の部屋に足を踏み入れました。マンションの一室。一人暮らしの、そう大きくはなく、それなりに片付いた部屋。鏑木「失踪が発覚したのは職場に無断で欠勤し、その後誰も連絡がつかないってことがわかってのことだ」「監視カメラの記録を見る限り、その前日の夜帰ってきて、それから部屋から出た形跡はなさそうだ」こじ開けられた鍵、切断されたドアチェーン。つまり内側からきちんと鍵がかけられていた、ということ。また、どの窓も固く閉ざされていたということがわかっています。生活の痕跡はそのまま残されており、何者かの侵入の痕跡もない。持ち物は全て残されていて、これらに手を付けられた様子もありません。「一瞬前までベッドで寝てて、そこから突然『消えた』みてえだよな」「それとも、『悪い夢に連れ去られた』なーんて、こと……、あってたまるかってんだよなァ?」そう、失踪者の手帳が鞄の中に残されており、その手帳は既に押収されており、その内容を共有されています。中身はごく普通の仕事のメモとちょっとした日常の記録でしたが、失踪から数日前の日付で「ここしばらくずっと嫌な夢を見ている」という記載があったと報告を受けています。夢、それが関係あるとでもいうのか。当時の犬見さんはそう思ったことでしょう。ただ、鏑木はどう思ったのでしょうか、不意に、口を開いたのでした。「なあ、犬見。お前は、嫌な夢って見るか?」「夢でなくても『忘れられない』こと、脳裏をぐるぐると巡って止まらなくなるような、光景が、あるか?」(ここでは「忘れられない辛い思い出」の話をする。基本的には犬見さんの話を肯定的に聞くものとする。鏑木は聞かれたら以下のように答える)「俺は薄情だし、頭の容量も足らんからな。今のことしか考えられやしねぇ」「……どんどん、忘れていくもんだ。いいことも、辛いことも、全部」(適度に話をしたところで切り上げる)「すまん、無駄口を叩いたな。捜査を続けよう」しかし、結局、どれだけ捜査をしたところで、失踪者の行方に関わる手がかりを得ることはできませんでした。かくして、部屋から出ようとしたところで、不意に鏑木が犬見さんの肩を叩きました。「何かついてたぞ」「……、いや、見間違いか? 悪ぃな、脅かして」しかし、その表情はやけに険しいもので。……そもそも、鏑木が自分から犬見さんに触れることは、記憶の限り今まで一度もなかったと記憶しています。※ここで、鏑木は犬見さんが怪異に取りつかれそうになっているところを「肩代わり」している。鏑木の目には「黒い胞子のようなものが飛んでいる」ように見えていて、それが犬見さんに付着していたのを取り除いた(代わりに自分がそれを得た)ということ。もし犬見さんが質問してきたなら黒い埃のようなものがくっついていた、という言い方をする。ただし犬見さんにはその埃は見えないし、鏑木も「見失った」という。ともあれ、その日はそれだけでした。それだけのはず、だったのですが――。鏑木があの「失踪事件」と同じ状況に陥ろうとしているのは、間違いなさそうです。そして、どうも「一度夢に入った人物」は二度は干渉できないということのようです。鏡さんが目にして、根林さんが分析し、そして、今動けるのは犬見さんひとり。他に適任がいたとしても、それを探している間に鏑木は消失してしまう可能性が高いでしょう。もし、あなたが望むなら。鏡さんや根林さんがそうであったように、鏑木の傍に近づけば、すぐにでも、夢に招かれることでしょう。あなたは、今、知らない住宅街に、一人立っています。真っ赤に染まった、夕暮れ時の街並み。ひどく静かで、車の音や人の声や足音、風の音も聞こえません。その時、空を……あるいは、風景全体を、音もなく黒い網が覆い。すぐにそれは消えましたが、背筋にぞわりとするような、感覚。異様な状況にSANc(1/1d3)……その時、あなたは視線を感じます。ふ、とあなたが視線を向けた先、塀の陰に何者かがうずくまっています。ひとりの少年です。あなたがそちらを見れば、びくりと震えて、おずおずと様子を窺ってくることでしょう。/《以下フリースタイル》鏑木少年と出会う。今回の鏑木少年は既に鏑木に会っており「怖いことが起こるかもしれないから隠れていろ」と言われている。なお相変わらず鏑木は鏑木少年には「お父さん」ということにしているらしい。困ったものであるが一応鏑木にちゃんと聞けば「説明がめんどいのと、あとは、これが俺の夢であるなら、……カスの嘘であろうとも、『信じさせる』のは俺の勝手だろ」ということ。言い方は悪いけど要するに子供のころの自分がかなえられなかったことを、叶えてもいいじゃないか、程度の意味合いである模様。《鏑木少年ロール指針》・見た目は小学校高学年~中学一年生くらい(聞かれれば「じゅっさい(=10歳、小学五年生)」と答える)。背は高め(155~160くらい)だがひどく痩せている。フードから覗く髪と目は灰色で、肌の色は薄い。鏑木と同じ特徴。・一人称は「おれ」。ひらがな多めのたどたどしい口調で喋る。(精神的に見た目・実年齢より幼い)・最初は酷くおびえている。視線が合わないことに気づかせてもいい。・いじめない、とわかったら少し明るく喋るようになる。喋り方はわやわやで、相変わらず視線は合わないが。・やや頭が悪いというか相手の話が半分くらい分かっていないような素振りを見せる。INTというよりはEDUが低いということが伝わるといいな。・話がある程度落ち着いたところで「おとうさんが、このへんにかくれてろって、いった」「こわいことが、おこるかもしれないから」という。・父親とおぼしき人物は、怖いことを遠ざけるためにあっち(鏑木家の方面)に向かった、という。・ただし、犬見さんがついてこさせない、とするなら問題は無い。きちんと諭せばわかってくれる。気が弱いので。・父親とおぼしき人物は、背が高くて眼鏡をかけてた、という証言をする。詳しく聞けば確か黒いシャツに赤いベストを着てて、ズボンの色は灰色だったと思う、という説明になるかな。適宜状況に合わせて。・ちなみに鏡さんや根林さんのことは前後関係を忘れつつも覚えている。毎回鏑木のことだけは忘れている。少し鏑木少年と喋った後に再び視界を覆う黒い網、そして遠方から聞こえる銃声。少年が「おとうさんがしんぱい」と言い出す。なお、犬見さんがそちらに向かおうとするなら「おれも、ついていきたい」ということを言う。少年に案内してもらうことができる。駆け付ければ、そこには黒い影のような何かがわだかまっています。それらは植物の姿をかたどっていることがわかるでしょう。アザレア、アイビー、あるいはそれ以上の、輪郭だけの花々。それらが首をもたげ、蔦を伸ばして、そこに立つ見慣れたシルエット――鏑木に襲い掛かろうとしているのがわかるでしょう。鏑木の手には一丁の銃。引金を引けば響く銃声、はじけ飛ぶ影の一部。しかし焼け石に水とばかりに、次から次へと殺到する影の植物たち。鏑木は、もう一度、引金を引くも――、銃声は響かない。弾切れのようです。「くそっ、俺の夢ん中なんだからもうちょい自由になれよなぁ!」理不尽なようですが、まあ、そう思うのもやむなし。犬見さんは鏑木と影の植物の間に割って入ることができます。簡易戦闘。影の植物のDEXは9(鏑木と一致)。攻撃は鏑木のキックと同等なのでCCB<=50回避は鏑木と同等だとマジで避けそうなので初期値でCCB<=18HPの設定はない。犬見さんが一撃を与えれば一旦植物は退散する。犬見さんの一撃を受けて、影の植物はばらばらに崩れ落ちます。けれど視界を覆う黒い網は消えてくれません。周囲にはふわふわと黒い埃のようなものが漂っており、ただならぬ気配に満ちています。……残された時間は、あまり多くはなさそうです。《鏑木家》古く小さな一軒家です。低い塀の向こうの庭は荒れていて、長らく手入れがされていません。また、表札を見るならそれはぼんやりとしており、文字の形をなしていないでしょう。……おそらく「鏑木」と書いてあるのだろう、と想像はできるでしょうが。鏑木「悪ぃな、迷惑かけちまって。鏡にも、根林にも、嫌なこと任せちまった」「何か根林が気づいて仕掛けてくれたのはわかったんだが、こっちも時間がなさそうだ」「俺は根林から話を聞くことはできなかったからな、手短にいこう」「俺は、『これから』『どうすればいい』?」以下、ロールによって色々変わるのでその場のノリで。一応選択肢としては「犬見さんが鏑木を殺す」「鏑木が自殺する」の2パターン。犬見さんが殺害の意志を示すなら、鏑木の方から自殺のアイデアを出すこと。(鏑木は犬見さんに負担をかけさせたくないので……)それ以外にも鏑木を確かに「殺す」ことができれば別のパターンもありうる。どうにせよ、鏑木はこういう。「助かるために必要なんだろ、気に病むんじゃねえよ……、っつーのは、ちょいと無理筋だろうが」「なーに、これまでも何度も殺されてきたんだ、あと一回くらい、どうってことはねえさ」「頼んだぜ、犬見。『あとで』いくらでも埋め合わせはするからよ」それは、『あと』があるという確信。これで終わりになどしない、という強い意志。どういう形であれ「ここにいる鏑木」が死ねば展開する。鏑木の体が力を失い、アスファルトの上に転がります。……その瞬間、世界を覆っていた黒い網がばらばらに崩れ始めました。予定外の挙動、ルーティンにはないタイミングでの「宿主」の死。その、刹那のバグは、あるいは自己修復可能な範囲だったかもしれません。けれど、その、生み出されたバグに打ち込まれる白い楔を、犬見さんは見ました。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。――それは、根林さんが「仕掛けた」楔。それはほんの少しのバグを、完全な破綻へと導いていきます。鏡さんが怪異の存在を見出し、根林さんがそれを分析し。そして、その結末を見届けることは、犬見さんに委ねられました。閉ざされていた家の扉が開き、そこから、黒い影が溢れ出してきます。意志らしい意志を持たない、自動的な怪異は、己の「維持」と「増殖」だけを目的に動いており。故にこそ、最後の足掻きとばかりに――あるいは、もう一度、誰かに根付こうと。犬見さん、あなたと、それから……、何故か「鏑木が」死んだのに未だそこにいる少年に狙いを定めます。黒い影は、――植物を纏った、女の姿を取ります。それは、犬見さんには、「相模原涼」にも「根林未来」にも見えたかもしれません。あるいは、傍らの少年には、「おかあさん……?」――に、見えていたかもしれません。姿を、輪郭を刻一刻と変えていく、あやふやな、「女」のかたち。その影を視認した瞬間、背筋を伝う、ざらりとした、嫌な感覚。体の内側に何かが這いまわるような嫌な感触。それが、怪異によって形を持った、鏑木のむき出しの恐怖、トラウマ――「心の疵」であることを、否応なく理解させられることでしょう。SANc 1d3+1/1d6+1それでも、――それでも。目の前の影は自壊しようとしています。ここで踏みとどまることができれば、怪異は滅び、悪夢は終わるでしょう。■戦闘終了条件以下の「いずれか」を満たした際に戦闘終了となります。・6ラウンドの経過(怪異の自壊)・冬虫夏草の怪異の消滅・犬見さんの死亡・気絶・SAN0・かぶらき少年の死亡・気絶・SAN0■冬虫夏草の怪異1ラウンドに3回行動を行います。HPが設定されており、また回避は行いません。※以下KP情報HP40全ての攻撃は命中50で判定・締め付け:1d3ダメージ、以降の自行動前に【STR*5】、失敗で行動不可・刺突:1d4+2ダメージ・恐怖の想起:SANc 1d3/1d6■かぶらき少年の運用かぶらき少年はこの夢を維持するものであり、ほんの少しだけ「自分の願い」を反映させられます。かぶらき少年はラウンド3回まで、MPを1d3消費することで以下3点のいずれかを可能とします。1.犬見さんの再行動 →「失敗した判定の再判定」または「行動の追加」が行えます。2.犬見さんのHP回復(1d3+2)3.犬見さんの発狂解除これはかぶらき少年の行動順とは無関係に、任意のタイミングで可能です。代わりに、かぶらき少年はSANチェック以外のあらゆる判定を行いません。また、かぶらき少年はショック判定を行わず、HPが0になるまでは死亡・気絶しません。(ただしMP0での気絶はあります)※鏑木の夢ってことは「多少は鏑木の自由になる」ということであり、犬見さんの力になりたいという気持ちは、鏑木も、そしてかぶらき少年も一緒である。あるいは鏑木曰くの「犬見ならこんな奴には負けないだろう?」の気持ちでもあるんだと思う。鼓舞激励、あるいは士気高揚、不撓不屈……。======戦闘中の描写や結末はアドリブ。どうなるかわからんので。======afterglow:余光、残光、afterimage:残像。その面影を忘れたとしても、きっと。残り続けるものは、ある。「だから、」「いいゆめを、みてね」【報酬】鏑木の夢から怪異を打ち払った:SAN+2d6畳む#[TRPGシナリオ]#アフターグロウ・アフターイメージ 2024.10.28(Mon) 21:46:14 遊び edit
CoC6版『庭師は何を口遊む』自陣向けに書いたシナリオ、HO3の犬見 勇さん向け。
※この文面には『庭師は何を口遊む』のシナリオのネタバレが含まれます。
■個別トレーラー
・犬見さん
「……戻ったか、犬見」
他部署の応援から戻ってきたあなたに、根林久雄は告げる。
鏡八千草の話は正しかったということ。鏑木の容態が思わしくないということ。
このまま放置すれば、鏑木は消失し、更に被害が拡大するということ。
鏑木を侵すものを食い止める儀式の説明を見つめながら、
あなたは一週間前の、鏑木と赴いた不可解な事件現場を思い出していた。
======
■Side: 犬見 勇/特殊ルール
「あなたはこの零課の中で最も屈強な体を持ち、体術などに於いても非常に優れている。」
あなたは、本シナリオにおいて〈挑発〉を使用可能である。
〈挑発〉
この技能はその戦闘ラウンドの間ずっと効力を発揮し続ける。つまり一度成功してしまうと、戦闘が終わるまでの間永続的に機能する。効果は、敵からの攻撃が全て自分に向けられるというものだ。ただし知能数が自分よりも下の獣等にのみ有効である。
〈挑発〉は対人間・神格には利用できない。
(『庭師は何を口遊む』抜粋)
======
さて、犬見さん、あなたは今、ちょうど鏑木から指示された他の部署の応援から帰ってきたところです。
応援に出る前に、鏡さんがこう言っていたことを思い出します。
(鏡さんからの宿題の文面を読み上げ)
鏡さんから鏑木の容態についてこのように聞かされていたあなたは、おそらく、不安を抱えていたことでしょう。
そして、零課の執務室に戻った犬見さんを、根林さんが迎えます。
(根林さんからの宿題の文面、情報項目を読み上げ)
鏑木は仮眠室で眠ったままでいます。
……本来、一旦は目覚めるはずなのですが、どうやら症状が深刻になってきているようです。
このまま放置していれば確実に鏑木は消失し、同じ症状が周囲に広まってゆくでしょう。
根林さんは一週間前の話をしました。
そう、あなたは一週間前、鏑木と共に「失踪事件」の捜査に出かけたことを思い出します。
これは本来は零課の仕事ではないのですが、他部署の応援というやつです。
事件の概要としては、前触れもなく失踪してしまった男性の行方の調査です。
(その男性の氏名や詳細については当シナリオには無関係のため割愛し、以降「失踪者」とだけ表記します)
失踪者と同様の「前触れのない失踪」が同一の地域で数件報告されていますが、未だその行方はつかめていません。
犬見さんは、鏑木と共に失踪者の自宅に赴きましたが、行き先の手がかりを見つけることはできませんでした。
……その時のことを、あなたは、思い出すでしょう。
《回想:一週間前》
犬見さんと鏑木は、失踪者の部屋に足を踏み入れました。
マンションの一室。一人暮らしの、そう大きくはなく、それなりに片付いた部屋。
鏑木
「失踪が発覚したのは職場に無断で欠勤し、その後誰も連絡がつかないってことがわかってのことだ」
「監視カメラの記録を見る限り、その前日の夜帰ってきて、それから部屋から出た形跡はなさそうだ」
こじ開けられた鍵、切断されたドアチェーン。
つまり内側からきちんと鍵がかけられていた、ということ。
また、どの窓も固く閉ざされていたということがわかっています。
生活の痕跡はそのまま残されており、何者かの侵入の痕跡もない。
持ち物は全て残されていて、これらに手を付けられた様子もありません。
「一瞬前までベッドで寝てて、そこから突然『消えた』みてえだよな」
「それとも、『悪い夢に連れ去られた』なーんて、こと……、あってたまるかってんだよなァ?」
そう、失踪者の手帳が鞄の中に残されており、その手帳は既に押収されており、その内容を共有されています。
中身はごく普通の仕事のメモとちょっとした日常の記録でしたが、失踪から数日前の日付で「ここしばらくずっと嫌な夢を見ている」という記載があったと報告を受けています。
夢、それが関係あるとでもいうのか。当時の犬見さんはそう思ったことでしょう。
ただ、鏑木はどう思ったのでしょうか、不意に、口を開いたのでした。
「なあ、犬見。お前は、嫌な夢って見るか?」
「夢でなくても『忘れられない』こと、脳裏をぐるぐると巡って止まらなくなるような、光景が、あるか?」
(ここでは「忘れられない辛い思い出」の話をする。基本的には犬見さんの話を肯定的に聞くものとする。鏑木は聞かれたら以下のように答える)
「俺は薄情だし、頭の容量も足らんからな。今のことしか考えられやしねぇ」
「……どんどん、忘れていくもんだ。いいことも、辛いことも、全部」
(適度に話をしたところで切り上げる)
「すまん、無駄口を叩いたな。捜査を続けよう」
しかし、結局、どれだけ捜査をしたところで、失踪者の行方に関わる手がかりを得ることはできませんでした。
かくして、部屋から出ようとしたところで、不意に鏑木が犬見さんの肩を叩きました。
「何かついてたぞ」
「……、いや、見間違いか? 悪ぃな、脅かして」
しかし、その表情はやけに険しいもので。
……そもそも、鏑木が自分から犬見さんに触れることは、記憶の限り今まで一度もなかったと記憶しています。
※ここで、鏑木は犬見さんが怪異に取りつかれそうになっているところを「肩代わり」している。
鏑木の目には「黒い胞子のようなものが飛んでいる」ように見えていて、それが犬見さんに付着していたのを取り除いた(代わりに自分がそれを得た)ということ。
もし犬見さんが質問してきたなら黒い埃のようなものがくっついていた、という言い方をする。ただし犬見さんにはその埃は見えないし、鏑木も「見失った」という。
ともあれ、その日はそれだけでした。
それだけのはず、だったのですが――。
鏑木があの「失踪事件」と同じ状況に陥ろうとしているのは、間違いなさそうです。
そして、どうも「一度夢に入った人物」は二度は干渉できないということのようです。
鏡さんが目にして、根林さんが分析し、そして、今動けるのは犬見さんひとり。
他に適任がいたとしても、それを探している間に鏑木は消失してしまう可能性が高いでしょう。
もし、あなたが望むなら。
鏡さんや根林さんがそうであったように、鏑木の傍に近づけば、すぐにでも、夢に招かれることでしょう。
あなたは、今、知らない住宅街に、一人立っています。
真っ赤に染まった、夕暮れ時の街並み。
ひどく静かで、車の音や人の声や足音、風の音も聞こえません。
その時、空を……あるいは、風景全体を、音もなく黒い網が覆い。
すぐにそれは消えましたが、背筋にぞわりとするような、感覚。
異様な状況にSANc(1/1d3)
……その時、あなたは視線を感じます。
ふ、とあなたが視線を向けた先、塀の陰に何者かがうずくまっています。
ひとりの少年です。
あなたがそちらを見れば、びくりと震えて、おずおずと様子を窺ってくることでしょう。/
《以下フリースタイル》
鏑木少年と出会う。今回の鏑木少年は既に鏑木に会っており「怖いことが起こるかもしれないから隠れていろ」と言われている。
なお相変わらず鏑木は鏑木少年には「お父さん」ということにしているらしい。困ったものであるが一応鏑木にちゃんと聞けば「説明がめんどいのと、あとは、これが俺の夢であるなら、……カスの嘘であろうとも、『信じさせる』のは俺の勝手だろ」ということ。言い方は悪いけど要するに子供のころの自分がかなえられなかったことを、叶えてもいいじゃないか、程度の意味合いである模様。
《鏑木少年ロール指針》
・見た目は小学校高学年~中学一年生くらい(聞かれれば「じゅっさい(=10歳、小学五年生)」と答える)。背は高め(155~160くらい)だがひどく痩せている。フードから覗く髪と目は灰色で、肌の色は薄い。鏑木と同じ特徴。
・一人称は「おれ」。ひらがな多めのたどたどしい口調で喋る。(精神的に見た目・実年齢より幼い)
・最初は酷くおびえている。視線が合わないことに気づかせてもいい。
・いじめない、とわかったら少し明るく喋るようになる。喋り方はわやわやで、相変わらず視線は合わないが。
・やや頭が悪いというか相手の話が半分くらい分かっていないような素振りを見せる。INTというよりはEDUが低いということが伝わるといいな。
・話がある程度落ち着いたところで「おとうさんが、このへんにかくれてろって、いった」「こわいことが、おこるかもしれないから」という。
・父親とおぼしき人物は、怖いことを遠ざけるためにあっち(鏑木家の方面)に向かった、という。
・ただし、犬見さんがついてこさせない、とするなら問題は無い。きちんと諭せばわかってくれる。気が弱いので。
・父親とおぼしき人物は、背が高くて眼鏡をかけてた、という証言をする。詳しく聞けば確か黒いシャツに赤いベストを着てて、ズボンの色は灰色だったと思う、という説明になるかな。適宜状況に合わせて。
・ちなみに鏡さんや根林さんのことは前後関係を忘れつつも覚えている。毎回鏑木のことだけは忘れている。
少し鏑木少年と喋った後に再び視界を覆う黒い網、そして遠方から聞こえる銃声。
少年が「おとうさんがしんぱい」と言い出す。
なお、犬見さんがそちらに向かおうとするなら「おれも、ついていきたい」ということを言う。
少年に案内してもらうことができる。
駆け付ければ、そこには黒い影のような何かがわだかまっています。
それらは植物の姿をかたどっていることがわかるでしょう。
アザレア、アイビー、あるいはそれ以上の、輪郭だけの花々。
それらが首をもたげ、蔦を伸ばして、そこに立つ見慣れたシルエット――鏑木に襲い掛かろうとしているのがわかるでしょう。
鏑木の手には一丁の銃。引金を引けば響く銃声、はじけ飛ぶ影の一部。
しかし焼け石に水とばかりに、次から次へと殺到する影の植物たち。
鏑木は、もう一度、引金を引くも――、銃声は響かない。
弾切れのようです。
「くそっ、俺の夢ん中なんだからもうちょい自由になれよなぁ!」
理不尽なようですが、まあ、そう思うのもやむなし。
犬見さんは鏑木と影の植物の間に割って入ることができます。
簡易戦闘。
影の植物のDEXは9(鏑木と一致)。
攻撃は鏑木のキックと同等なので
CCB<=50
回避は鏑木と同等だとマジで避けそうなので初期値で
CCB<=18
HPの設定はない。犬見さんが一撃を与えれば一旦植物は退散する。
犬見さんの一撃を受けて、影の植物はばらばらに崩れ落ちます。
けれど視界を覆う黒い網は消えてくれません。
周囲にはふわふわと黒い埃のようなものが漂っており、ただならぬ気配に満ちています。
……残された時間は、あまり多くはなさそうです。
《鏑木家》
古く小さな一軒家です。低い塀の向こうの庭は荒れていて、長らく手入れがされていません。
また、表札を見るならそれはぼんやりとしており、文字の形をなしていないでしょう。
……おそらく「鏑木」と書いてあるのだろう、と想像はできるでしょうが。
鏑木
「悪ぃな、迷惑かけちまって。鏡にも、根林にも、嫌なこと任せちまった」
「何か根林が気づいて仕掛けてくれたのはわかったんだが、こっちも時間がなさそうだ」
「俺は根林から話を聞くことはできなかったからな、手短にいこう」
「俺は、『これから』『どうすればいい』?」
以下、ロールによって色々変わるのでその場のノリで。
一応選択肢としては「犬見さんが鏑木を殺す」「鏑木が自殺する」の2パターン。
犬見さんが殺害の意志を示すなら、鏑木の方から自殺のアイデアを出すこと。
(鏑木は犬見さんに負担をかけさせたくないので……)
それ以外にも鏑木を確かに「殺す」ことができれば別のパターンもありうる。
どうにせよ、鏑木はこういう。
「助かるために必要なんだろ、気に病むんじゃねえよ……、っつーのは、ちょいと無理筋だろうが」
「なーに、これまでも何度も殺されてきたんだ、あと一回くらい、どうってことはねえさ」
「頼んだぜ、犬見。『あとで』いくらでも埋め合わせはするからよ」
それは、『あと』があるという確信。
これで終わりになどしない、という強い意志。
どういう形であれ「ここにいる鏑木」が死ねば展開する。
鏑木の体が力を失い、アスファルトの上に転がります。
……その瞬間、世界を覆っていた黒い網がばらばらに崩れ始めました。
予定外の挙動、ルーティンにはないタイミングでの「宿主」の死。
その、刹那のバグは、あるいは自己修復可能な範囲だったかもしれません。
けれど、その、生み出されたバグに打ち込まれる白い楔を、犬見さんは見ました。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。
――それは、根林さんが「仕掛けた」楔。
それはほんの少しのバグを、完全な破綻へと導いていきます。
鏡さんが怪異の存在を見出し、根林さんがそれを分析し。
そして、その結末を見届けることは、犬見さんに委ねられました。
閉ざされていた家の扉が開き、そこから、黒い影が溢れ出してきます。
意志らしい意志を持たない、自動的な怪異は、己の「維持」と「増殖」だけを目的に動いており。
故にこそ、最後の足掻きとばかりに――あるいは、もう一度、誰かに根付こうと。
犬見さん、あなたと、それから……、何故か「鏑木が」死んだのに未だそこにいる少年に狙いを定めます。
黒い影は、――植物を纏った、女の姿を取ります。
それは、犬見さんには、「相模原涼」にも「根林未来」にも見えたかもしれません。
あるいは、傍らの少年には、
「おかあさん……?」
――に、見えていたかもしれません。
姿を、輪郭を刻一刻と変えていく、あやふやな、「女」のかたち。
その影を視認した瞬間、背筋を伝う、ざらりとした、嫌な感覚。体の内側に何かが這いまわるような嫌な感触。
それが、怪異によって形を持った、鏑木のむき出しの恐怖、トラウマ――「心の疵」であることを、否応なく理解させられることでしょう。
SANc 1d3+1/1d6+1
それでも、――それでも。
目の前の影は自壊しようとしています。
ここで踏みとどまることができれば、怪異は滅び、悪夢は終わるでしょう。
■戦闘終了条件
以下の「いずれか」を満たした際に戦闘終了となります。
・6ラウンドの経過(怪異の自壊)
・冬虫夏草の怪異の消滅
・犬見さんの死亡・気絶・SAN0
・かぶらき少年の死亡・気絶・SAN0
■冬虫夏草の怪異
1ラウンドに3回行動を行います。
HPが設定されており、また回避は行いません。
※以下KP情報
HP40
全ての攻撃は命中50で判定
・締め付け:1d3ダメージ、以降の自行動前に【STR*5】、失敗で行動不可
・刺突:1d4+2ダメージ
・恐怖の想起:SANc 1d3/1d6
■かぶらき少年の運用
かぶらき少年はこの夢を維持するものであり、ほんの少しだけ「自分の願い」を反映させられます。
かぶらき少年はラウンド3回まで、MPを1d3消費することで以下3点のいずれかを可能とします。
1.犬見さんの再行動
→「失敗した判定の再判定」または「行動の追加」が行えます。
2.犬見さんのHP回復(1d3+2)
3.犬見さんの発狂解除
これはかぶらき少年の行動順とは無関係に、任意のタイミングで可能です。
代わりに、かぶらき少年はSANチェック以外のあらゆる判定を行いません。
また、かぶらき少年はショック判定を行わず、HPが0になるまでは死亡・気絶しません。
(ただしMP0での気絶はあります)
※鏑木の夢ってことは「多少は鏑木の自由になる」ということであり、犬見さんの力になりたいという気持ちは、鏑木も、そしてかぶらき少年も一緒である。あるいは鏑木曰くの「犬見ならこんな奴には負けないだろう?」の気持ちでもあるんだと思う。鼓舞激励、あるいは士気高揚、不撓不屈……。
======
戦闘中の描写や結末はアドリブ。どうなるかわからんので。
======
afterglow:余光、残光、
afterimage:残像。
その面影を忘れたとしても、きっと。
残り続けるものは、ある。
「だから、」
「いいゆめを、みてね」
【報酬】
鏑木の夢から怪異を打ち払った:SAN+2d6
畳む
#[TRPGシナリオ]
#アフターグロウ・アフターイメージ