知らない走馬灯お題:まわる#dounats_odai 目が回る。世界が回る。 走馬灯、という言葉がある。死の間際に今までの記憶が次々と蘇ること。だけどこれは誰の記憶だろう。アタシのじゃない、って思うのに脳裏に蘇る、色鮮やかな世界、気味の悪い世界、言葉にもできない『異界』の光景。アタシが立つ『こちら側』じゃない、頭でわかっていても、知らないはずの風景が、足元まで侵食してきて。 ぐい、と、手を引かれる。その手のぬくもりを確かだと思った時、視界がぱっと晴れる。 見慣れた研究室。見慣れた白衣の仲間たち、それから、手錠をかけられた手で、咄嗟にアタシの手を握った『生きた探査機』。「ありがと、X」 この頭はとうにおかしくなっている。この目は、ここにいながら、ここにはないものが映る。それでも、アタシの頭と目がここにはないものを求める連中に必要とされている限り。アタシの手を握ったそいつの手を握り返して、アタシが、まだここにいることを、確かめる。続きを読むペン:LAMY「LAMY safari/ピナコラーダ」インク:石丸文行堂「カラーバーインク/モッキンバード」畳む#てがきのひとひら 2024.10.19(Sat) 09:04:24 文章 edit
お題:まわる
#dounats_odai
目が回る。世界が回る。
走馬灯、という言葉がある。死の間際に今までの記憶が次々と蘇ること。だけどこれは誰の記憶だろう。アタシのじゃない、って思うのに脳裏に蘇る、色鮮やかな世界、気味の悪い世界、言葉にもできない『異界』の光景。アタシが立つ『こちら側』じゃない、頭でわかっていても、知らないはずの風景が、足元まで侵食してきて。
ぐい、と、手を引かれる。その手のぬくもりを確かだと思った時、視界がぱっと晴れる。
見慣れた研究室。見慣れた白衣の仲間たち、それから、手錠をかけられた手で、咄嗟にアタシの手を握った『生きた探査機』。
「ありがと、X」
この頭はとうにおかしくなっている。この目は、ここにいながら、ここにはないものが映る。それでも、アタシの頭と目がここにはないものを求める連中に必要とされている限り。アタシの手を握ったそいつの手を握り返して、アタシが、まだここにいることを、確かめる。
ペン:LAMY「LAMY safari/ピナコラーダ」
インク:石丸文行堂「カラーバーインク/モッキンバード」
畳む
#てがきのひとひら