毎月300字小説企画「初」第一回「初」2023年1月7日「まさか、ほんとに車出してくれるとは思わなかった」「出さなかったら困るだろ。君というより、奈月さんが」「持つべきものはよい同僚だなあ」「迷惑がられてないかだけが心配だよ。奈月さん、君と二人で過ごしたかったんじゃないか?」「見ての通り、喜んでるよ?」 そういうものなのだろうか。首を傾げたまま、半ばまで灰になった煙草を携帯灰皿に捨てる。 うっすら明るくなりゆく空の下、近くの自販機に寄っていた奈月さんが戻ってくる。手渡されるのは温かな缶コーヒー。「わがまま聞いてくれて、ありがとうございます」「いえ。どうせ、暇なんで」 笑ったつもりだったけれど、果たして、上手く笑えただろうか。 ――初日の出まで、あと数分。――『薄明の下』続きを読む畳む#[毎月300字小説企画] 2023.1.7(Sat) 22:45:01 edit
第一回「初」2023年1月7日
「まさか、ほんとに車出してくれるとは思わなかった」
「出さなかったら困るだろ。君というより、奈月さんが」
「持つべきものはよい同僚だなあ」
「迷惑がられてないかだけが心配だよ。奈月さん、君と二人で過ごしたかったんじゃないか?」
「見ての通り、喜んでるよ?」
そういうものなのだろうか。首を傾げたまま、半ばまで灰になった煙草を携帯灰皿に捨てる。
うっすら明るくなりゆく空の下、近くの自販機に寄っていた奈月さんが戻ってくる。手渡されるのは温かな缶コーヒー。
「わがまま聞いてくれて、ありがとうございます」
「いえ。どうせ、暇なんで」
笑ったつもりだったけれど、果たして、上手く笑えただろうか。
――初日の出まで、あと数分。
――『薄明の下』
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