by admin. ⌚2024年8月2日(金) 06:32:50〔111日前〕 Planet-BLUE <2142文字> 編集
『異界』。ここではないいずこか、無数に存在し得るといわれる並行世界。
未知の領域を探査すべく選ばれたのは、刑の執行を待つ死刑囚Xであった。
目に見えない命綱だけを頼りに『異界』に飛び込んでいくXと、彼を観察する「私」の実験と対話の日々を綴る連作短編集。
虚構夢想 / SF / ファンタジー / ホラー / 現代
目には見えない命綱ひとつで『異界』へと潜っていく死刑囚X。
今日も「私」はディスプレイを通して彼の視点を共有する。
……時には『異界』を垣間見、時には他愛のない言葉を交わす。
Xと「私」の、特に名前のない日々を綴った短編連作。
虚構夢想 / SF / ファンタジー / ホラー / 現代
『異界』。ここではないいずこか、無数に存在し得るといわれる平行世界。
未知の世界を観測すべく選ばれたのは、刑の執行を待つ死刑囚Xであった。
目に見えない命綱だけを頼りに『異界』に飛び込んでいくXと、彼を観察する「私」の実験と対話の日々、もしくは、三十一の忘れられない道行き。
※綺想編纂館(朧)様( @Fictionarys )の2022年7月の企画『文披31題』の参加作品です。
虚構夢想 / SF / ファンタジー / ホラー / 現代
『異界』。ここではないいずこか、無数に存在し得るといわれる並行世界。
この国の片隅で、未知の世界を知る者たちの『異界』探索プロジェクトが密やかに進んでいた。
プロジェクトメンバーはリーダー、サブリーダー、エンジニア、ドクター、新人の五人、国からの監査官が一人、それから異界潜航サンプルが一人。
そんな少数精鋭のプロジェクトは、今日もつつがなく、あるいは少しの事件とともに進んでいく。
これは、歴史には語られない彼らの、『異界』と彼ら自身にまつわる三十と一の物語。
※綺想編纂館(朧)様( @Fictionarys )の2023年7月の企画『文披31題』の参加作品です。
虚構夢想 / SF / ファンタジー / ホラー / 現代
『異界』。ここではないいずこか、無数に存在し得るといわれる並行世界。
本来「あり得ざる」それを観測する異界研究者たちは、今日もそれぞれの姿勢で『異界』と向き合っている。
『無名夜行』番外編、最初の異界潜航サンプルXが去った後の、プロジェクトメンバーたちの「残響」を描いた連作。
虚構夢想 / SF / ファンタジー / ホラー / 現代
全てが「霧」から生まれいずる世界にて。
世界の最西端、辺境の地で燻っていた「俺」……最強最速の翅翼艇『エアリエル』を駆る「救国の英雄」ゲイル・ウインドワードは、遠い日に目指した「青空」の色を持つ人工霧航士、セレスティアと出会う。
新たな相棒との日々と迫りくる過去、そして霧の向こうの「青空」とは。
真と偽の果て、青空目掛けて霧裂く空戦SFファンタジー。
霧世界報告 / ファンタジー / SF / 空戦 / 異世界
ここではない世界。万物の根源が「霧」である世界。
女王国首都の雑誌社に所属するネイト・ソレイルは、今日も怠惰で奇矯な作家カーム・リーワードの首根っこを引っ掴んで仕事をさせる。
そうでないと、きっと、誰の手も届かないどこかに行ってしまうから。大事なことを、全部、全部、取り落としてしまうから。
女神歴九六九年、帝国との戦争が終わって五年。
これは、落ち着きのない作家先生と、そんな先生を追う新米担当編集者の他愛のない日常の物語。
霧世界報告 / ファンタジー / SF / 日常 / 異世界
「ごきげんよう、叔父さま」
霧深き女王国の果ての果て、雨の止まない土地にて。
監獄塔『雨の塔』の面会室で「私」が出会ったのは、姪を名乗る少女アレクシア。
彼女は完璧な笑みを浮かべて言う。
「叔父さまの知恵を借りたい」――と。
犯罪者の「私」と面会者のアレクシア。
本来なら交わるはずのない二人による、安楽椅子探偵ミステリもどき。
霧世界報告 / ミステリ / ファンタジー / ふしぎ / 異世界
ノンシリーズものの短めなお話をまとめています。
ジャンルは話ごとにファンタジー中心にSF、現代、メタフィクション風など雑多。気が向いたら増えます。
SF / ファンタジー / ホラー / コメディなど
時計うさぎの不在証明 / 甘味組曲 / さよなきどりはなかない /
by admin. ⌚2024年8月2日(金) 06:32:50〔111日前〕 Planet-BLUE <2142文字> 編集
ラビットとトワを乗せた車は荒野を走っていた。あちこちにひびが入ったアスファルトの道が荒野の真中に細い線となって続いていた。
「どこに行きたい?」
ラビットが前を見たまま言った。トワは少し考えてから、答える。
「まだ、よくわからない。でも、ここから東に行きたい」
「東? 何故」
「……わからないけど、そっちに呼ばれてる気がする」
「そうか」
ラビットはそれきり黙って車を運転していた。トワもしばらくは黙って窓の外に広がる果てしない荒野を見つめていたが、再び口を開いた。
「ラビットは」
「何だ」
「ラビットはどうしてわたしと一緒にいてくれるの?」
「貴女が一緒に行きたいと言ったからだろう」
「でも」
「私に断る理由もない。ただ、それだけだ」
トワは納得がいかないといった表情でラビットを見た。ラビットはサングラスの下の瞳でちらりとトワを見やったが、すぐに道に目を戻して言う。
「それなら、私からも質問させてもらっていいか」
「何?」
「……何故、私なんだ?」
「どういうこと?」
「他にも貴女と一緒に行ける人間はいるだろう。だが、何故私なんだ?」
トワの大きな目が、ラビットを見た。
「ラビットは、わたしを守ってくれた」
「それだけか?」
「うん」
「私が貴女を途中で見捨てることだってあるかもしれん。普通ならば軍に命を狙われてまで貴女を守りきろうとまでは考えないし、私だってそうなのかもしれない……それでも私のことを信じられるのか?」
「見捨てたりしないよ」
「何故そう言いきれる?」
「……わからない。だけどわたしはラビットを信じる」
ラビットはその言葉を聞いて、目の上に手を当てた。そして、微かに目を細め、口端を歪めて言う。
「全く、思い込みの激しいお姫様だ」
「わたし、お姫様じゃないよ」
トワはそう言って少し不満げな顔をする。
「何、ただの喩えだ。だが貴女は私のことを美化しすぎてやいないか? 私は、自分が大切にしているものを守れるほど強くはないし、その自信もない……」
ラビットはそう言いながら、一瞬目をトワに向けた。トワはさっきから変わらず真っ直ぐにラビットを見ていた。真っ直ぐ見つめられるのに慣れていないラビットは、すぐにまた道に目を戻してしまう。
再び、車の中に沈黙が訪れた。車のエンジンが立てる軽い音と拡声器から流れてくるピアノの音が妙に遠く聞こえる。
「わたし、『白』を探しているの」
トワが、急に言った。ラビットは驚き、自分の耳が捉えた言葉を改めて確認するようにトワを見る。
「何だ、いきなり」
「『白』を探しに来たの」
「しろ?」
「ラビットは『無限色彩』って知ってる?」
「いや、知らないな」
放たれたラビットの言葉が嘘であることに、トワは気付いていなかった。
「不思議な力を持っている人のことを、無限色彩保持者っていうの。それで、その人の持ってる能力を無限色彩っていうの」
「超能力者とは違うのか?」
「違うの。超能力と似てるけど……無限色彩は、超能力よりも大きくて、強い力」
トワは、そこで一回言葉を切った。ラビットは話の続きを待つように、黙ってアスファルトの道を見ていた。
「あと、無限色彩を持っている人は、身体に『ジュエル』がついているの」
「ジュエル?」
「うん。色のついた宝石みたいなもの。そのジュエルの色によってその人の無限色彩の強さが決まるの。『青』が一番強くて、『赤』が一番弱い」
「……『白』は?」
「二番目に強い。でも、わたしが探している『白』は、『青』と同じくらい強いんだって」
「その『白』がどこにいるかはわからないのか? どんな特徴を持っているか、とか……」
「わたしは知らないの。白いジュエルを持っていることと、この星にいることくらいしかわからない。だから……この星を見て回りながら、『白』を見つけようと思ったの」
そう言って、トワはラビットから、車の外の空に目をやった。果てしなく続く荒野、それに白い雲に覆われた空が広がっていた。絶えず流れているピアノの乾いた音色が、妙にその光景とよく合っている。
「トワ、貴女も、無限色彩とやらを持っているのか?」
ラビットの言葉に、しかしトワは答えなかった。
「その『白』は、この星を美しいって言ってたんだって」
「……美しい? この星が?」
「だから、わたしもそれを確かめたかったの。それが、もう一つの目的」
「この星が美しいと思うとは、どれだけ妙な感性の持ち主なのかが伺えるな」
「そんなことないよ。だってラビットも、そう思っているんでしょう?」
「何故そう思う?」
「……だって、ラビットもこの星にいるから」
ラビットは、トワの言葉に絶句し、戸惑った。トワはそんなラビットに気付いたのか気付かなかったのか、窓の外を見ながら、言った。
「……町だ」
ラビットもそれに気付き、そちらに目をやる。トワの興味が他に移ったのに少なからず安堵しながら。
荒野の真ん中の道を取り囲むようにして小さな家々が立ち並んでいるのが見えた。
「行くか?」
「うん」
白い雲の切れ目から、青い星が覗いていた。
破壊を呼ぶ、青い星が――