空色少年物語

07:或る平和な一日(2)

「えと、わたしの言うことが、変なのでしょうか?」
 悩むセイルを見て、シュンランも戸惑ったのだろう、助けを求めるような視線をチェインに向ける。チェインは「変ってわけじゃないよ」と横を歩くシュンランの頭を軽く撫でる。シュンランはくすぐったそうに、ほんの少しだけ目を細めてチェインを見上げた。
「興味深いし、それはそれで決して間違いじゃないと私は思う。でも、そういうことは決して大声で言うんじゃないよ」
「何故ですか?」
「それは『成人の儀』って決まりを作った女神様を疑うことになるからさ。女神様の言葉や決まりを疑う者は、全て楽園の『異端』……存在が許されない者なんだ」
 そして、女神の考えに反するものを楽園の民が認識する前に抹消する。そのために本殿の上層部が組織した集団が『影追い』なのだ、とチェインは言った。
「女神に真っ向から歯向かうノーグ・カーティスは当然影追いが狩るべき相手だけどね、何も影追いの相手は人だけじゃない」
「禁忌機巧を壊すのも、影追いの仕事だっけ?」
「ああ。機巧は女神ユーリスの語る歴史には存在しえない。そんなもの、『あるはずがない』……そう女神様は仰るし、大半の民はそう思っている」
 シュンランがあからさまに眉をひそめた。それもまた彼女にとっては「変なこと」だったのだろう。そして、これに関してはセイルも「変だ」とはっきり思う。シュンランに出会う前ならともかく、今は禁忌機巧の存在もこの目で確認している。決して物語の中の存在などではないと、言い切れる。
 けれど。
 見えなければ、無いものと同じだからね――チェインはそう言って綺麗な形をした唇を苦笑に歪める。
「普通の人は、機巧なんて見ずに一生を終えることがほとんどさ。隠すばかりじゃ何にもならないし、あるものを『無い』って言い張るのはナンセンスだとは思うけどね」
『影追いらしからぬ発言だな』
 ディスがぼそりとセイルの頭の中で呟く。シュンランも小首を傾げてチェインに問いかける。
「しかし、チェインは影追いさんなのですよね? おかしいと思いながら、影追いさんなのですか」
「……私にとっては、影追いは『手段』でしかないから」
 チェインは言って、立ち止まる。セイルが目を上げれば、そこは郵便局だった。翼を広げた鳩を描いた看板が、風に揺られて揺れている。
 話の続きは後だ、まずは本来の目的を果たそうとセイルは二人と一緒に建物の中に入る。忙しく行き交う人々が、セイルの空色の髪に思わず目を留め、しかしすぐに視線を逸らした。
 セイルは自然とうつむきがちになりつつも、人々の間をすり抜けて手紙を受け付けるカウンターの前に辿り着き、手紙を出す手続きを行う。一瞬セイルの名を聞いた受付が怪訝な顔をしたが、チェインが取り成してくれたおかげで手続き自体はほんの数分で終わり、セイルたちは郵便局を後にした。
 手紙は、果たして母に届くだろうか。
 セイルは歩きながらも少しだけ目を伏せて考える。無事であってほしい、そして無事であることがきちんと伝わればいい。同時に、早く兄に会って、家に帰りたいとも思う。願わくば、兄と一緒に家に帰れればよいと、強く思う。
『セイル』
 穏やかな、少年のような声が、頭の中に響いた気がした。人と少しだけ違う発音で呼ばれる名前が不思議と心地よかったことを、思い出す。
 今やその声は楽園全土に恐怖と猜疑心をもたらしているけれど……セイルにとってはいつまでも、優しい記憶を呼び起こさせる声なのだ。
「ねえ、セイル」
 不意に声が降ってきて、セイルは目を上げた。横を歩くチェインが眼鏡越しにセイルを見やる。
「一つだけ、聞かせてもらいたいことがあるんだ」
「俺に?」
 そういえば、出掛けにそんなことを言っていたと思い出す。思わず身構えてしまうセイルだったが、チェインは穏やかな表情で言う。
「ああ……答えづらかったら、いいんだけどさ」
 一旦、言葉を切って。それから、静かだけれどよく響く声で、彼女は言った。
「 『機巧の賢者』ノーグ・カーティスは、アンタの目から見てどういう奴だったのかなって」
「どういう、こと?」
「言葉通りだよ。私は、影追いとして、そして私個人としてノーグを殺そうとしている。それは、アンタも了解しているはずだ」
 何度聞いても、その言葉だけはセイルの中に重く響く。けれど、ここで目を逸らすわけにはいかなかった。目に力をこめて、チェインを見つめ返す。チェインの涼やかな色をした瞳は時に刺すような光を抱くけれど、今はただ、水面のように静かな光を宿してセイルの姿を映しこんでいた。
「ただ、アンタが言う『兄貴』としてのノーグが、どんな人間だったのか少しだけ気になっただけさ。大した理由じゃない」
 チェインは付け加えて、唇を微かに歪めた。それは笑みのようだったが、セイルの目からは「自嘲」のようにも見えた。
 言ってやる理由なんてねえぞ、と頭の中のディスが小さく呟いた。
 確かにその通りだ。兄をこれから殺す相手に、セイルの思い出を話したところで何になるというのだろう。言ったところでチェインの決意が揺らがないのは、わかりきっている。
 けれど、聞きたいというならば、言わない理由もない。
 いつかチェインは兄を殺す。その時に、自分が兄をどう思っていたのか、少しでも思い出してもらえればいい。それで何が変わるわけではないけれど、ただ、祈るように、そう思った。
 セイルは、頭の中に浮かんでは消えていく記憶を一つ一つ結びつけながら、口を開く。
「……俺さ、兄貴との思い出ってそんなに多くないんだ」
 チェインが意外そうな表情を浮かべた。セイルはその表情の変化を目に焼き付けながら、言葉を続ける。
「兄貴、俺が物心ついたときには家の外に働きに出てて、帰ってくるのは月に一度くらいだったから。それに、帰ってきてもいつも部屋に閉じこもって、本を読んだり何かよくわからない書類を書いてたみたいだった」
 セイルが覚えているのは、机に向かう兄の背中。それに。
「あ、でも、料理を作るのは好きだって言ってたっけ。兄貴が帰ってきた時は、いつもよりずっと豪華なご飯でさ、あの頃はそれが嬉しかったっけ……嬉しかったのは、兄貴がいろんな話をしてくれたってのもあるけど」
 父も兄もめったに家に帰ってこないカーティス家の食卓はいつも静かだったから、セイルにとってはそこに兄がいること自体が嬉しかったのだ。
「ノーグは、よく喋る奴だったのかい?」
「ううん、普段はすごく静かな人。ちょっと、怖いくらいに。俺からお願いしないと、いつまでも本を読んでたりしてたと思う」
 そういえば、セイルの中での兄は「優しい人」ではあったが、同時に少しだけの恐怖を伴う存在だったと思い出す。その理由は今のセイルにはよくわからない。大声でセイルを怒ったことも、酷いことを言われたことも無いと記憶しているのだけれども。
「けど、話をしてってお願いすると、どんな時でも嫌な顔一つしないで相手してくれるんだ。兄貴は本当に何でも知ってて、俺が聞きたいことは全部答えてくれた。あと、飛空艇の模型の作り方を教えてくれたりもしたよ」
「模型? ……ああ、ノーグ・カーティスは飛空艇技師でもあったんだっけね」
「うん。俺、兄貴が異端研究者だなんて、今でも信じられないんだ。俺が知ってるのは、空と船の話が好きで、いつも飛空艇の模型を作ってくれる、飛空艇技師の兄貴だけだったから」
 ――いつかこの風の海に、俺の船を飛ばすんだ。
 ――誰も見たことの無い、竜蟲のような船さ。
 セイルは歌うように呟いた。『竜蟲』とは、旧レクスやユーリスではあまり使われないが、主に北方で『蜻蛉』を指す言葉だ。兄は元々北方テレイズの生まれで、幼い頃に事故で両親を失ってユーリス神聖国に住む遠い親類……今の父に引き取られたのだという。
「兄貴、いつもそうやって言ってた。いつか蜻蛉のような飛空艇を造りたいんだって。シェル・B・ウェイヴが設計図に残したような、まだ現実にはなっていない船。俺は、兄貴が嘘をついてたとは思わない。本当にそんな夢を見てたんだって、今でも信じてる」
 だって、その時にはいつも兄は空を見上げていた。
 顔すらも思い出せないけれど、背筋をぴんと伸ばして、両腕を広げて空を仰ぐその姿だけははっきりと覚えている。空の話をするときは、いつもそうだった。ずっと年上のはずの兄は、子供のように声を弾ませてセイルに風の海を泳ぐ架空の船を語る。
 そして、セイルの瞼にも、夢の船の姿が描かれる。ぴんと翼を伸ばし、それこそ蜻蛉のように細い体と長い羽を持った船だ。
 気づけば、自分も遠い日の兄と同じように、背筋を伸ばして空を仰いでいた。兄が「俺の夢見た色に似ている」と言った空色の髪を風に揺らして。そう、この恨めしい青い髪を染めることもせずそのままにしていたのも、兄が褒めてくれたからだった。
「チェインからすれば許せない人だと思うし、消えた兄貴が何であんな恐ろしいことをしてるのかは、俺もわからない。でも、俺が知ってる兄貴は、そういう人だった。俺にとっては、やっぱり大切な人なんだ」
「……そうかい」
 チェインはしなやかな指を折り、口元に当てて思案する。そこに表情は無く、セイルは不安になる。言いたいことを言ってしまったけれど、チェインを不快にさせてしまっただろうかと思う。
「その、俺、変なこと言っちゃったかな」
 セイルが恐る恐る問うと、チェインは「いや」と首を横に振る。それから、真っ直ぐにセイルを見つめ返して言った。
「つい考えちまったのさ。私がノーグを殺したら、アンタは私を殺すのかなって」
「俺が、チェインを?」
 セイルは目を丸くした。そんなこと、考えもしなかった。確かにチェインがノーグを殺すと言った時に、ショックは受けた。どうしていいかわからなくなって、目の前が真っ白になるような感覚に陥った。けれど、自分がチェインを殺すなどということは、思いもしなかった。
「殺す、ってのは今のアンタにはわからないかもね。けれど、アンタはきっと兄を殺した私を恨むんだろうなって思ったのさ。因果応報、当然のことさね」
 チェインの言葉は静かだった。セイルは何も言えないままに、チェインを見上げることしかできない。
 果たして、自分はチェインを恨むのだろうか。
 そういえば、兄が見つかるその瞬間を思い描きはしたけれど、その後のことは考えもしなかった。どのような形でこの旅が終わろうとも、セイル自身の未来はその先に続いているというのに。
「ブランも言ってたと思うけどね……私は、奴を殺すために影追いになった。何も異端全てを憎んでいるわけじゃない。女神様や楽園を守るためなんて、そんな大義名分も無い。『機巧の賢者』ノーグ・カーティスへの恨みだけで、この武器を手に取ったのさ」
 金属が触れ合う音が、袖から響く。ディスを苦しめ傷つけた、銀の鎖だ。普段はおそらく魔法で袖の中に収めているのだろうそれは、女神に仇なすものを討つための武器であるはずだ。
「私はね、セイル。奴に、姉を殺されたんだ」
「お姉さん?」
「そう。血の繋がった、『ただ一人の』姉」
 前に、セイルに言った言葉と同じように。チェインはもう一度『ただ一人の』という言葉を強調してみせた。
「大きな声じゃ言えないけど、姉は『エメス』の異端研究者だったんだ。ノーグとは相当前から親しくてね、相棒と言っても良かった」
「もしかして、兄貴が一番初めに殺したのって……」
 ブランが教えてくれたはずだ。
 ノーグ・カーティスはちょうど今から六年前に当時の相棒を殺した、と。
 チェインは硬い表情で、セイルの言葉を肯定する。
「そう、それが私の姉さ。姉さんはいつも、自慢げに奴のことを話していたよ。若いけれどとても優秀な研究者で、尊敬してるってさ。だけど姉さんはそいつに裏切られて死んだ。惨たらしく、そして誰にも顧みられずに」
 セイルは、「誰にも顧みられない」というチェインの言葉の意味がわからなくて首を傾げた。シュンランも同様だったようで、すみれ色の瞳をぱちくりさせながらチェインを見上げている。チェインは「言葉が足りなかったかな」と言って、言葉を付け加える。
「さっきも言ったとおり、姉さんは異端研究者だったからね。神殿も姉さんを弔ってはくれない。死ぬのが当然だって、言われちまったよ」
「酷い……」
 シュンランがぽつりと呟いた。セイルも、それには流石に反感を覚えた。けれど、チェインはゆるゆると首を横に振る。それは確かに『当たり前』なのだ、といって。
「女神様に逆らった者は、まっとうな死は迎えられない。それは姉さんも覚悟の上だったはずさ。だけどさ、信じていた奴に銃を向けられるってのは、どんな気持ちだったんだろうね」
 問いかけるようなチェインの言葉は、何もセイルに問いかけたわけではなかっただろう。それでもセイルは考えずにはいられなかった。兄を尊敬していたという、チェインの姉。相棒と呼ばれていたからには、共に過ごす時間も長かったはずだ。
 その相棒である兄が、銃を手に取りこちらにその銃口を向けたとしたら。
 その先が例えばセイル自身だったとしたら。
 ぎゅっと心を締め付けられる。水の中でもないのに、息が苦しくなる。これは想像でしかない。現実からは程遠く、そして誰かが答えをくれるわけでもない。ただ、同じようなことを何度も何度も……それこそ六年もの間、チェインは考えてきたに違いない。
「それを思ったら、どうしても、許せなくなっちまったのさ。あの男、姉さんを裏切って殺した『機巧の賢者』が」
 チェインはすっと目を細める。伸ばした腕から、じゃらりと鎖の音を鳴らして。
「神殿になんか渡すつもりはない、この手で奴を殺す。誰のためでもない、姉さんのためでもない。ただ、『奴を許せない』私自身のために」
 セイルは、ただ息を呑むばかりだった。
 目の前にいるはずのチェインが、遥か遠く、手の届かない場所に立っているような気がする。
 私自身のために。そう言い切った彼女はセイルの目からは恐ろしく、しかしとても悲しく映った。
『……厄介だな』
「ディス?」
『もしこれで「姉さんのため」とか言ったら、言いてえこともあったのにな。それが「自己満足」だってことすら自覚してんだ、言えることは何もねえ』
 ディスの声はいつになく低く、唸るようだった。
 ディスの言うとおり、チェインの言っていることは自己満足だ。自己満足以上の何でもない、けれど、自分自身に誓ったことだからこそ誰が手を出すことも許されない、確固たる誓いだ。それはきっと、チェインにとっては自らを縛る『鎖』でもある。
 それを理解して、セイルは自然とチェインへの認識を改めることになった。
 強い意志を込めた瞳で虚空を見据えていたチェインは、しかしすぐにセイルに視線を戻す。その表情は力無い笑みだった。
「ごめんよ。頼まれてもいないのに、聞きたくもないことを聞かせたよね」
「う、ううん! それは違う!」
 セイルはあまりに見当違いなチェインの言葉に、あわてて首を横に振った。そのあまりの勢いに驚いたのか、チェインが目を見開いたけれど、セイルは構わず声を上げた。
「聞けてよかった。多分知らないままだったら、俺、闇雲にチェインが怖いだけだった。いつ、兄貴が殺されるのかって怯えるだけだった。でもさ」
 セイルは、いつものように思いを上手く伝えることの出来ない自分に苛立ちながらも何とか上ずった声で言葉を放つ。
「チェインは、俺の話を否定しないで聞いてくれた。それに、自分のことも隠さずに話してくれた。間違ってたらごめんだけど、チェインは俺と兄貴のことを理解しようとしてくれた。それに、俺が何もわからないまま終わらせたらダメだって、考えてくれたんだと思ってる」
「セイル……」
「ありがとう。チェインが兄貴を殺すその時に同じようにお礼を言えるかはわからないけど……今の俺はよかったと思ってる。それだけ、わかってもらいたいんだ」
 チェインの思いを折ることは出来ない。彼女の言葉にそう確信させるだけの力があることは、変わらない。ただ、その誓いの外、例えば本来彼女の復讐には何の関係も無い少年の心を気遣うだけの優しさがあることは、確か。
 その優しさが、セイルを安堵させた。
 もしかすると、それが本来のチェインなのかもしれない。復讐に心を燃やす前の、武器を手に取る前のチェイン。その頃のことは、あくまで想像することしか出来なかったけれど。
「アンタは、私を恐れないのかい。私は、アンタの兄を殺すんだよ」
「怖いよ。今だって、怖い。その時になったらチェインを許さないかもしれない。けど、チェインのことをわかっているのは、きっと俺にとっては大切なことだと思うんだ」
 チェインが、俺に対してそう思ったように。
 セイルは言って、チェインを見上げた。チェインは、呆然とした表情でセイルを見つめて……小さく、溜息をついた。
「何だか、アンタと喋ってるとこっちの方が怖くなるよ」
「ど、どういうこと?」
「何でもないさ。じゃあ、話はこれでおしまいでいいかな」
 チェインはひらりと手を振った。セイルも小さく頷いた。本当はもう少し聞きたいこともあったかもしれないけれど、それは思いついた時でいい。この人の前では思ったことを飲み込む必要も無く、話せばきちんと応えてくれるということが、わかったから。
 すると、不意にシュンランがセイルの顔を覗き込み、笑う。
「セイル、よかったですね」
「え?」
「セイルの顔、明るくなりました」
「うん……そうかも。色々話したら、楽になった」
 状況は何一つ変わってはいないけれど、「わかる」ことでこれだけ楽になるとは思わなかった。それに、自分の言葉で思いを伝えたことも、心が軽くなる要因だったのかもしれない。
 シュンランは一歩前に出て、白い髪を揺らして笑う。
「お話は大切ですよ。色々なことを思っていても、言葉にしなければ、伝わらないです」
「そうだね。何か、わかった気がする」
 自分は今まで、色々な思いを胸の中でかき回すだけで、伝える努力をしてこなかった。いつも、相手の顔色を見て、何を言われるかと恐れるばかりで、自ら声を上げることはなかったのだ。だが、こちらを理解しようと歩み寄ってくれる人もいるのだということを、今更ながらに理解した。
 もう少し、勇気を出そうとセイルは心に誓う。一歩を踏み出すことを無闇に恐れないように。何もかもをわからないままにして、目と耳を塞がないように。
 その誓いを確かめるように、シュンランの手を今までよりほんの少しだけ強く、握る。シュンランもその手を優しく握り返し、言う。
「さあ、セイル。行きましょう、早くしないと日が暮れてしまいます」
「うん」
「おや、まだ何処かに行くのかい?」
 チェインが首を傾げると、「はい!」とシュンランは弾けるような笑顔で言う。
「セイルと一緒に、髪飾りを選ぶです」
「ああ、そうだったのか。それなら、商店街はこっちだよ」