幸福偏執書庫

シアワセモノマニア(青波零也)の小説アーカイブ

001:地球―序章
 星団暦で六五七年、地球暦(西暦)で三九八九年。星団連邦政府は十年後の三九九九年十二月二十五日、太陽系第三惑星地球に巨大な発光体『ゼロ』が接触すると発表した。
 そして、政府はこの事態に際し何の関与もしないということも。
 その理由として、発光体の正体が未だに掴めないこと、発光体の軌道を逸らす計画を実行するだけの時間が残されていないということなどが挙げられるが、それは単なる建前にすぎない。
 本来の理由は、今地球が滅びようとも、星団連邦にとって得にはなれど決して損害にはならないということ。
 地球はとうの昔に星が保有していた資源を使い尽くし、現在は連邦政府が管轄する他の惑星からの援助で全てを賄っている。今や地球という惑星の存在は政府からすれば決して得ではなかった。それを考えてみると、今回の判断もある意味では理に適っていた。
 こうして地球は事実上、政府から見捨てられた。
 現在地球の人口は一千万程度。首長星級の惑星にしてみればかなり少ない数値を叩き出している。そして、今回の発表で地球からはほとんどの人間が退避すると考えられていた。
 が、現実は違った。
 地球に住む人間のほとんどは政府に対し「地球に残る」という意思表示を行ったのだ。政府は困惑した。何度も退避を呼びかけたが、実際に他の惑星に退避したのは未来のある子供達とその家族くらいだった。
 結局、政府は住民を退避させることをほぼ諦め、地球への経済的援助も最低限度のもの以外は打ち切った。あと政府がすべきことは、もはや無意味な避難船の派遣だけであった。
 
 
 かくして十年の時が過ぎ、終末は迫る。
 これは、青き惑星だった一つの星の物語。

by admin. Planet-BLUE <716文字> 編集