今日は妙に明るい日だ、と『ヤドリギ』は思う。
ランタンの灯りに頼らずとも地面と靴との境目がはっきりと目に映る。いくら発光性の植物が多く根付いている区域であろうとも、ここまで明るく感じられる日はどれだけあるだろう。
ふと、目を上げれば、光を宿す植物が天井を覆いつくしていた。闇の中に無数に点る青白い灯火。それはさながら、いつか見た祭りの光景のよう。深い、深い霧を照らす、いくつものランタン。遠くから見れば、きっとこの光の洪水のように見えたに違いない。
もちろん、この場には『ヤドリギ』以外の誰もいなかったから、祭りの熱気も喧噪もはるかに遠く。例えば、その日横を歩いていた誰かさんの気配だってない。
もし、彼がここにいたなら何と言うだろうか。
自分と同じように、この、光り輝く空を前にして感嘆の息をつくことがあるだろうか。それとも、あの日のように、凍り付くようなまなざしを投げかけてくるのだろうか――。
そんな、ありもしない考えを首の一振りで打ち消して。
『ヤドリギ』は左の手でランタンを握り直し、右の、手があるべき場所に生えた蔦で行くべき道を探っていく。『獣のはらわた』は霧明かりすらも届かぬ場所で、故にこそ、このような「明るい」場所はことさらに『ヤドリギ』の目には眩しく映る。目にも、心にも。
はらわたの散歩者たち