はらわたの散歩者たち

雨のはらわた

 地上に雨の降る日は、はらわたの様相も少しばかり変わる。
 地上から流れ込んでくる泥水がはらわたの中を巡っていくのだ。縦横無尽に走る水に飲み込まれたらひとたまりもないが、はらわた上層に住まう家無したちは既に水の通り道を心得ており、雨水の通る場所を巧みに避けて暮らしているし、『ヤドリギ』もまた人ならざる直感で、水を避けて歩くことに苦労はしなかった。
 ごうごうと音を立てて地上からの水が流れていくのを横目で眺める。
 地上から来た水が、はらわたのどこに飲み込まれていくのか『ヤドリギ』は知らない。
 足元に黒々と開いた穴の中に落ち込んでいく水が、下って、下って、どこへ流れ着くのか、それとも流れ着かないまま、いずこかを巡り続けるのだろうか。そんなことを考えながら『ヤドリギ』は今日も一人、蔦を引きずりながらはらわたの奥へと潜っていく。