朝起きてみれば、窓の外にはすっかり霜が降りていた。そりゃあ寒いわけだ。
のそのそ上着を羽織り、ぺったりと窓に張り付くセレスにも上着を羽織らせたところで、セレスが真っ青な目を俺様に向けてきた。
「ゲイル、今日は外が白いです」
「おう、初霜だな。霜、見たことなかったっけか」
ここ、サードカーテン基地に来る前のセレスのことは全く知らんが、どうもあんまり外界に接していなかったということくらいはわかる。案の定、セレスはこっくりと頷いて窓の外に青い視線を戻した。
「綺麗ですね。全てに霧がかかっているみたいです」
霧がかかっているよう。言われてみれば、霧払いの灯に照らされてなお白々とした世界が広がっている。目に映る全てのものに霧がかかっている、ように見えなくもない。
同じものを見ていても、セレスと俺では見えているものは違う。それがなんとも面白くあり、同時に、セレスの見ている世界が知りたくもなる。セレスの世界は、俺が見ている世界よりもずっと鮮やかで、面白いものであるようだったから。
「よし、ちょっと外に出てみるか? 霜が溶けちまう前にさ」
提案してみれば、セレスはいつも通り表情こそ薄かったけれど、青々とした目をぱっちり見開いて、嬉しそうな声で、
「はい!」
と返事をするのであった。
(サードカーテン基地、秋の終わり)
霧世界余録