知らない走馬灯お題:まわる#dounats_odai 目が回る。世界が回る。 走馬灯、という言葉がある。死の間際に今までの記憶が次々と蘇ること。だけどこれは誰の記憶だろう。アタシのじゃない、って思うのに脳裏に蘇る、色鮮やかな世界、気味の悪い世界、言葉にもできない『異界』の光景。アタシが立つ『こちら側』じゃない、頭でわかっていても、知らないはずの風景が、足元まで侵食してきて。 ぐい、と、手を引かれる。その手のぬくもりを確かだと思った時、視界がぱっと晴れる。 見慣れた研究室。見慣れた白衣の仲間たち、それから、手錠をかけられた手で、咄嗟にアタシの手を握った『生きた探査機』。「ありがと、X」 この頭はとうにおかしくなっている。この目は、ここにいながら、ここにはないものが映る。それでも、アタシの頭と目がここにはないものを求める連中に必要とされている限り。アタシの手を握ったそいつの手を握り返して、アタシが、まだここにいることを、確かめる。続きを読むペン:LAMY「LAMY safari/ピナコラーダ」インク:石丸文行堂「カラーバーインク/モッキンバード」畳む#てがきのひとひら 2024.10.19(Sat) 09:04:24 文章 edit
誰もボクのことを知らない場所に出かければ、何かが変わるかなと思ってた。 もちろんそんなことはなくて、確かにとっても楽しい場所だけど、そこでもボクは透明で、いてもいなくても変わらないみたいで。 だけど、透明にしてたのはボク自身だって、ともだちができて気づいたんだ。 さあ、勇気を出して、めいっぱい声をあげよう。「ハロー・ワールド!」(ともだち百人できるかな)#てがきのひとひら続きを読むペン:PILOT「iro-utsushi<いろうつし>」インク:セーラー万年筆「SHIKIORI ―四季織―/夜桜」畳む 2024.10.8(Tue) 15:37:51 文章 edit
ハロー・ワールド! 初めまして、お友達? あら「お友達」なんて呼ばれる筋合いはないって? 寂しいこと言わないでよ、アタシはあんたのこと気に入ってるんだから。俺の何がわかるって? 何でも知ってるわよ、あんたの名前も、所属も、出自も、何が好きで何が嫌いで、それから何をやらかしたのかも。本当にご愁傷様、これが最後のおしゃべりになるなんて。(モッキンバード)#てがきのひとひら続きを読むペン:PILOT「iro-utsushi<いろうつし>」インク:石丸文行堂「カラーバーインク/モッキンバード」畳む 2024.10.8(Tue) 15:37:16 文章 edit
厳冬、ということばが相応しかろう。 傍目に体温らしきものを感じられない青ざめた肌。凍空に立ちこめる雲のごとき鉛色の髪、その合間に覗くのは雪の白。身を切る北風に色をつけるなら、きっと、そのまなざしの銀となるのだろう。 人の形をした冬は、今日も街を行く。モノトーンの世界に、朽葉色のマフラーだけが、色を持って靡く。(冬の擬人化)#てがきのひとひら続きを読むペン:PILOT「iro-utsushi<いろうつし>」インク:PILOT「iroshizuku<色彩雫>/冬将軍」畳む 2024.10.8(Tue) 15:36:47 文章 edit
綺麗、という言葉が大嫌いだ。 好きでこんな顔をしてるわけじゃない。見世物じゃねぇんだこっちを見んな。お前に俺の何がわかる? どいつもこいつも知ったような口を利きやがって。「あんた、見た目で損してるタイプでしょ」 そんなどうってことない軽口に、救われたような心持ちになった、なんて、言えるわけないだろうが。(初めてかけられた言葉)#てがきのひとひら続きを読む畳む 2024.9.21(Sat) 00:04:57 文章 edit
この世は所詮カードの裏表、容易に覆り、何一つ定かでない。 だから、慣れた手つきでカードを切るこの男が、この生き方を選ぶしかなかったのも、わかりはする。 カードの裏表。俺は運が良かったに過ぎない、が。「勝ったら負けた方にお願いを一つ、だったな?」 さあ、勝負だ。俺とお前、今はこの場に二人。何の憂いもなく、ただ、遊ぼう。(カードの裏表)#てがきのひとひら続きを読む畳む 2024.9.21(Sat) 00:04:42 文章 edit
そして、夜が来る。 極彩色のウサギを追って、少女は深い穴に飛び込んでいく。「明けない夜はない。その通りです」 少女の姿をやめて、鍵のかかった扉から扉へ。「それでも、この夜が続く限りは、あなたと踊ってみせましょう!」 今宵も、シルクハットの黒猫が、サイバースペースを駆けてゆく。(天代朱鷺羽と夜の旅)#てがきのひとひら続きを読む畳む 2024.9.20(Fri) 06:16:32 文章 edit
お題:まわる
#dounats_odai
目が回る。世界が回る。
走馬灯、という言葉がある。死の間際に今までの記憶が次々と蘇ること。だけどこれは誰の記憶だろう。アタシのじゃない、って思うのに脳裏に蘇る、色鮮やかな世界、気味の悪い世界、言葉にもできない『異界』の光景。アタシが立つ『こちら側』じゃない、頭でわかっていても、知らないはずの風景が、足元まで侵食してきて。
ぐい、と、手を引かれる。その手のぬくもりを確かだと思った時、視界がぱっと晴れる。
見慣れた研究室。見慣れた白衣の仲間たち、それから、手錠をかけられた手で、咄嗟にアタシの手を握った『生きた探査機』。
「ありがと、X」
この頭はとうにおかしくなっている。この目は、ここにいながら、ここにはないものが映る。それでも、アタシの頭と目がここにはないものを求める連中に必要とされている限り。アタシの手を握ったそいつの手を握り返して、アタシが、まだここにいることを、確かめる。
ペン:LAMY「LAMY safari/ピナコラーダ」
インク:石丸文行堂「カラーバーインク/モッキンバード」
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